― 苦情処理検討会 ミニ講座より― |
「苦情を考える」−その7− |
日時: 2002年 3月18日(月) 講師: (株)エムジー商品試験センター 窪田一郎 氏 |
このミニ講座も1年続き、ようやく具体的な事故品の見方に入りました。今回から具体的な事故原因追求のヒントにはいります。最初は「衿周辺に発生する事故」です。 |
(1) 衿に係わる作用因子 |
汗、光、ネックレス、パーマ液・整髪料・染毛剤、プレス熱、漂白剤、着用摩擦、 ネクタイやスカーフなどの他の衣類 1)汗 A) 汗は首後部で発汗量が多い。背上部、脇下、腕、肩も汗の影響を受けやすい。2)光 A) 光の作用は衿特有ではないが、汗との複合作用で衿が目立つ。3)ネックレス A) 金属製ネックレスは汗によって金属が溶出する。4)パーマ液・整髪料・染毛剤 A) パーマ液・整髪料・染毛剤は衿に付着しやすい。5)プレス熱 A) 永久接着芯では接着樹脂が冷えるときに熱収縮し、衿の収縮の一因となる。6)漂白剤 A) 塩素系漂白剤は芯地樹脂の黄変の原因となる。7)着用摩擦 A) 毛羽の擦り切れ、生地の折れ山の擦り切れを生じる。8)他の衣類 A) 汚染の原因となる。 |
(2) 衿に係わる感受性因子 |
芯地樹脂、芯地接着剤、染料、生地、サイズ 1)芯地樹脂 ワイシャツやブラウスなど衿の保形を目的に芯地を使用するが、硬さを調整するため樹脂が用いられる。この樹脂が塩素系漂白剤で黄変したり、洗濯で脱落して保形効果が消失したりする場合がある。 この樹脂にホルムアルデヒドが使用されていると皮膚炎の原因となる場合があるが、非ホルムアルデヒド系の樹脂でも、硬い場合、摩擦による繰り返し皮膚刺激によって皮膚炎を生じることもある。2)芯地接着剤 芯地接着剤による事故はワイシャツやブラウスに多い。トップヒューズ芯と呼ばれる永久接着芯は衿の型崩れを防ぎ、家庭洗濯後ノーアイロンでも衿がきれいというメリットがある反面、高温では接着樹脂の染み出しや収縮の原因となる。 仮接着芯などフラッシュ芯と呼ばれるものは、プレス時に引っ張って形を整えないとイセコミ収縮のような現象を生じる。表生地と芯地が剥がれだすと気泡が入ったように見え、完全に剥がれると表衿にシワが発生することがある。3)染料 衿だけに用いられる染料があるわけではないが、衿部が受けやすい汗・パーマ液・ネックレスの金属などによって変色を生じやすい傾向がある。 特に反応性染料と酸性染料で変色事故が目立つ。含金属染料の脱金属化や、逆の含金属化は、衿部のほか、ドットボタン使用部位や金属ファスナー使用部位でも発生する。 光汗の複合作用はポロシャツなどに多いが、衿折れ山から一部は台衿にかけてと衿外側に発生する。4)生地 衿に芯地を使用するものにあっては、表生地と芯地の収縮バランスの検討が重要である。両者のバランスが不適切だと衿の型崩れを生じやすい。 生地が硬いと皮膚刺激が増し、生地が柔らかいと衿の保形性が悪くなる。 衿ネームに用いられるブランドラベルにポリエステルやナイロンの熱裁断したものを用いると皮膚刺激を受けやすい。レーヨンのラベルでは水洗いでラベルの収縮を生じやすい。5)サイズ Tシャツ、トレーナ、セーターなどのかぶりものでは、ネック寸法に適切なゆとりがないと縫い糸切れやリンク糸切れを生じやすい。開口部には着脱するのに適切なサイズが必要である。 |
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