17年度

第1回アパレル問題研究会-ディスカッション

事例1 ストライプ柄糸からの色泣き
事例2 色泣き
事例3 全体的な変色
事例4 つり下げタグの汚染
事例5 全体的な変色
事例6 ストライプからの色泣き
参 考 商業水洗いにつて

参考商業水洗いにつて

ランドリー(白物洗い)の基本的手法

対象被洗物:ワイシャツ、シーツ、白衣など強洗浄に耐える物

工程 時間 温度 洗剤助剤など 水量 備考
予洗 5~10分 50~60℃ 洗剤、アルカリ剤など 中水位 汚れがひどい物が多いので、予洗を行うことによって本洗の洗浄効率を良くし、再汚染を防止するため。再汚染させないために時間は短め、水量は汚れの分散のため本洗より多め。近年は、>予洗を行わないケースが多くなっていると思われる。
排水         汚れた洗液をきれいな水に交換
本洗 10~20分 50前後℃ 洗剤、助剤(アルカリ剤、キレート剤、酵素、CMCなど) 低水位 予洗によって除去できなかった強い汚れに酵素・機械力(低水位で叩き効果を出す)などを働かせる。ランドリーで使用される酵素は50~55℃でもっとも効果的に働く物が多い。温度が高過ぎると失活する。
漂白 10~15分 60℃前後 過炭酸ナトリウム   酵素は漂白剤によって失活する事が多いので、酵素が働いた後、温度を少し上げて漂白する。石けんの割合が多い洗剤を使用する場合、漂白剤のロスが出るので、洗液を排水交換した後に漂白する方がよい。過炭酸ナトリウムが時間とのバランスでもっとも効果的に働くのは60℃。
クールダウン   40℃までダウン     急激に冷水で冷やすと強いシワやくすみが発生するので、水温を徐々に下げる。
中間脱水          
濯ぎ1回目 数分 常温(クールダウン工程がない場合、40℃に加温)   中~高水位 石けん使用の場合は、温湯で濯ぐ方がすすぎ効率はよい。
中間脱水 軽く        
濯ぎ2回目 数分 常温 サワー剤(クエン酸など) 中~高水位 サワー剤は濯ぎ2回目または3回目で使用。
アルカリの中和のため。1回目で使用しないのは、濯ぎ浴中に汚れ成分が多いと考えられ、界面活性剤の残留も多いことから、界面活性剤を失活させないため(再汚染防止)。
中間脱水 軽く        
濯ぎ3回目 数分 常温   中~高水位  
中間脱水 軽く        
糊付け 数分   天然糊、化学糊(酢ビ系)など   同じのりの濃度なら、PEより綿の方が糊が堅く付く。
最終脱水 数分(強)        
ほぐし 数分       ドラムを回転させ、荒ジワを除去

仕上げは、濡れている状態で熱板(140~160℃前後)プレス機(衿カフス、スリーブ、ボディ)、またはアイロンによる

              
ランドリー(黒物洗い)一般的手法

対象被洗物:ポリエステルやナイロンなどのブルゾン類、ポリエステル混や綿素材のパンツやシャツ、トレーナーなど、家庭洗濯機を使って強洗浄できる色柄物で、汚れの状態から水洗いをした方が良さそうな物。

工程 時間 温度 洗剤助剤など 水量 備考
本洗 5~10分 30~40℃ 弱アルカリ洗剤または中性洗剤 低~中水位 汚れが多い物は、前処理をする。機械力は弱~強
中間脱水 軽く           
濯ぎ1回目 数分 常温    中~高水位 機械力は弱~中
中間脱水 軽く           
濯ぎ2回目 数分 常温 柔軟剤等 中~高水位 機械力は弱~中
最終脱水 数分
(中~やや強)
           
ほぐし 数分          荒ジワを除去

基本的には濡れがけプレスは行わない。自然乾燥が多いが、場合によってはタンブラーや静止乾燥機使用。
ウールプレスや人体、トンネル、ハンドアイロンなどで仕上げ。

白物洗いの変化と発生する問題

現在では、洗剤や助剤が改良され、また消費者の生活環境(食事内容も含む)や着用環境の変化などに伴い、汚れの種類や量が変化し、予洗を行わない「1回洗い」で、「低温(40~50℃)」「短時間(15~20分)」という洗浄法が増えつつある。しかし、従来の「強洗浄」と比較すると皮脂や不溶性汚れ等の除去率が低下している事は否めない。
 そこには、ワイシャツが白や淡色物中心から、カラーシャツ・ストライプ・柄物の比率が増加しているので、「強洗浄」が行いにくくなっているという背景もあるが、一方でクリーニング料金競争の激化(ワイシャツのクリーニング料金が100円前後というところも多い)に伴い、通常の洗い方ではコストが合わなくなってきているという側面もあると思われる。

 コストダウンのため、洗浄温度を低下させ、工程をシンプルにし、洗浄時間を短くし、最悪のケースでは「濯ぎの水量・回数・時間」のカットを過剰に行っているケースもあるようだ。この様な過剰なコストカットは、汚れの除去率の低下だけではなく、濯ぎ不足による「アルカリ・界面活性剤の残留」の問題を生む。高温の濡れがけプレスによる色泣きや黄変、皮脂の残留による変色、不溶性汚れの蓄積による黒ずみなどは、むしろ必然と言える。

 消費者の心理として、ワイシャツ売価1000円を切る時代に、クリーニング料金とのバランスを考えるという事は理解できるが、ある程度の高級シャツ、ドレスシャツ、カジュアルシャツのクリーニングについては、アパレル業界、クリーニング業界がその位置付けを再考し、両者が協力し合って、消費者に対して「クリーニング、メンテナンス」についての新しい提案を行っていく必要があるのではないか。

絵表示と実際の商業クリーニング条件との乖離

 ワイシャツの絵表示は、そのほとんどが「103(40℃)」表示になっているが、上記のように実際の白物洗い対象のシャツは、60℃で長時間(最低30分)+アルカリ+漂白+濡れがけプレスに耐えるものでないと実用的とは言えない。
 一般サラリーマンのワイシャツは、「排気ガスの煤塵や埃が舞う環境の中でネクタイで衿を首に圧着し、一日中摩擦される」状態での着用という、もっともハードに汚れる可能性のあるアイテムである。

 クリーニング料金の節約などから、数日間着用され汚れが蓄積された状態であったり、「一度着用しただけだから、あまり汚れていない」と考え、次に着用するまで皮脂を付着させたまま長期間放置された結果、皮脂等の酸化による黄変した状態でクリーニングに持ち込まれるケースがひじょうに多く、これらの汚れや黄変を除去するためには、白物洗いの強洗浄は「必須」である。

 この白物洗浄に耐えられないシャツは、販売時に「ビジネスシャツ」ではなく「ドレスシャツ」であること、「汚れを蓄積させないで早めにクリーニングする」こと、「クリーニング店にドレスシャツであることを告げ、適切な洗いをしてもらうこと」「クリーニング料金もそれなりに掛かること(一般的な店では400~500円程度)」等を説明する事が必要である。

クリーニング業者の対応

 今一度「洗い」の基本を科学的に見直し、不適切なコストカットを行わない、シャツの素材や染色・デザインを考慮し洗浄方法を選択する、ドレスシャツなど場合によっては、衿・袖まわりなど汚れが多いところを部分的に前処理し、全体を弱洗浄、低温漂白、手仕上げを行うなど、具体的な処理基準を明確にし、消費者にしっかりと説明し、料金アップなどの理解を求めていかなければならない。また、具体的な処理基準をある程度業界で統一し、アパレル業界と話し合いながら商品の品質要求基準のすりあわせを行う事が必要ではないか。

ドレスシャツ洗浄法の提案
工程 時間 温度 洗剤助剤など 水量 備考
前処理     溶剤、洗剤、酵素など   衿、袖口など、汚れが強い部分の油性・不溶性汚れを前処理で出来るだけ除去する。石油系ドライクリーニングできる物は、ドライクリーニング処理をしても良い(少ないダメージで油性汚れを効率的に除去できる)
本洗 5分 30℃ 弱アルカリ洗剤 低~中水位 機械力を小さくした弱洗い。
漂白 20~30分 40~45℃     過酸化水素水を中心に、低温にシフトして漂白する。まんべんなく漂白できる程度の低機械力で行う。
中間脱水 軽く            
濯ぎ1回目 数分 常温    中~高水位 機械力は弱
中間脱水 軽く            
濯ぎ2回目 数分 常温 場合によっては、中和剤使用 中~高水位 機械力は弱
中間脱水 軽く           
糊付け       天然糊、化学糊など     
最終脱水 数分(やや強)            
ほぐし 数分          荒ジワを除去
仕上げ   中~高温     濡れがけプレスを行わない。ハンドアイロンによる仕上げ。

掲載の検討結果は、あくまで課題試料の観察及び事故状況の推定に基づいて検討した結果の一つであり、試験や分析から導いたものではありませんので事実と異なることがあります。ご了承ください。