日 時 | 平成21年10月17日(土)13:30~16:30 |
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会 場 | QTEC (日本繊維製品品質技術センター) 福井試験センター |
内 容 | テーマ ~環境にやさしい繊維~ (1)「セルロース由来の溶融紡糸繊維"フォレッセ"と東レのバイオマス由来素材」 東レ株式会社 繊維研究所 主任研究員 荒西 義高 氏 (2)「植物由来ポリ乳酸繊維の特性と 今後の技術的課題」 京都工芸繊維大学 繊維科学センター 教授 望月 政嗣 氏 |
荒西氏講演要旨: 冒頭、バイオベース素材の開発状況について触れられ、特にアミノ酸を原料に微生物が持つ酵素を用いてC5ジアミンに変換し、このC5ジアミンを原料にしたナイロンの開発を行っている旨、話された。
この他、エコロジカルな種々の取組みについても触れられた。
主題のセルロース由来の”フォレッセ”だがセルロース繊維の熱可塑化の基本は、水酸基に起因する水素結合の抑制であり、水酸基を特定のセルロース混合エステルで封鎖し、更に製糸性をよくする為の可塑剤を使用することにより、実現した。溶融紡糸が可能になった為、新合繊のような異形断面糸の製造も可能になった。溶融紡糸は、レーヨン湿式紡糸での二硫化炭素やアセテート乾式紡糸でのアセトンのような溶剤を用いず、環境に優しい。染色には分散染料が用いられ、主に衣料用素材での展開を図っているとのことであった。 望月氏講演要旨: ポリ乳酸繊維(以下PLA)は とうもろこし由来で生分解性だが、合成高分子である為、温度・湿度・pHなどによる化学的な加水分解反応が律速となり、更に水溶性オリゴマーになってようやく生物分解が進行するという2段階の分解過程になる。
演者らは、この加水分解反応を抑制する技術を開発、より耐久性の高いPLAを実現した。PLA繊維は、この他すぐれた抗菌性、防炎性等があることを紹介。用途として、護岸用の土嚢や法面の植栽保護材、植生ネット、緑茶のティバッグなどの他、エコバッグ、タオル等がある。今後の技術的課題として、染色性、耐久性、耐アイロン性、寸法安定性、耐クリープ性、耐屈曲摩耗性等の向上があるが、これらの問題の多くは、ポリ(L-乳酸)連鎖に立体構造の異なるD-乳酸ユニットが取り込まれることにより立体規則性が損なわれ、結晶化化速度が大幅に低下し、不完全な結晶構造しか形成されないことに起因しており、その改善策が種々の角度から検討されているとのことである。