22年度

平成22年度 品質と技術に関する講演会 (平成22年度最終行事)

日 時 平成23年4月23日(土)13:30~17:00
会 場 福井県工業技術センター 多目的実習室
内 容 (1)「百貨店繊維製品品質パスポートについて」
   (株)高島屋 MD本部 品質管理課長  松本まさみ氏
(2)「複合紡糸の歴史とその商品開発例」
   野口技術士事務所  野口章一郎氏 (元カネボウ合繊(株))
(3)「2月繊維製品品質研究会の総括」
   TES会北陸支部事務局 大木信雄氏 (QTEC福井試験センター参事)
参加者 40名

講演会要約

松本氏は、百貨店における繊維製品の品質管理のあり方と実際の管理体系を自ら作成の中心を担われた「百貨店繊維製品品質パスポート」を用いて講演された。 また、あっと驚くような顧客からの申し出の例など 百貨店の裏話もご披露され、大変楽しい講演であった。 "高級と高品質は違う。縫製を除き、値段と品質はほぼ反比例する。" というお話や"品質管理とは、消費者を満足させて、クレームを防止するもので、基準を高くすることが目的ではない"と話された点は新鮮であった。
なお、クレームの大半は情報伝達不足に起因していることを痛感されており、この 「百貨店繊維製品品質パスポート」作成への強い契機となった点もよく理解できた。 この繊維製品の基礎知識から苦情対応のマニュアルまでを系統的にまとめられたものは、売場の店員さんの教育用だが、TESにとっても大変参考になる。

野口氏は、「コンジュゲート繊維」の開発の歴史に触れられてから、複合紡糸技術の具体的な展開と種々の用途開発例を話された。極細糸の高密度織物による眼鏡拭き用布の開発、低融点ポリエステルとレギュラーポリエステルとの複合糸による電磁波シールド用ハイメッシュの開発、カーボンの微粒子を練りこんだ導電繊維(カーボンを表面に出す技術)の開発、6ナイロンとポリウレタンの複合紡糸によるストッキング用糸の開発、芯部に特殊な化合物と周囲に6ナイロンを配置した複合糸で接触冷感を現出する技術、芯部に温度調節機能を持つポリマーを配置した複合ナイロン糸等々、大変 興味深い内容であった。複合紡糸技術はこれからも機能性繊維を生み出すキーテクノロジーである。
また、野口氏がパリ駐在時に、自らが撮影されたエリゼ宮殿内部の写真の紹介や、同氏が取り組むICタグ付クリーンルーム用衣服とその管理手法の紹介などもあり、多彩な内容の講演であった。

大木氏からは、2月研究会の8つの事例について、追加試験を行い、発生原因の確認が出来たものも含め、その内容は小冊子にまとめられ、総括的な報告がなされた。