2019年度

2019年度 年次大会 及び 特別講演会

日 時 2019年6月22日(土)13:30~18:30
会 場 福井県坂井市・高椋コミュニティセンター 3F 大会議室
内 容 1.2019年度 北陸支部 年次大会  
(1)2018年度行事報告 及び 会計報告・同監査報告
(2)2019年度行事計画と予算案の審議と採択
(3)2019年度支部新役員の承認 (2名の幹事退任と2名の新任、他は留任)  
 新任幹事:大崎英次氏(日華化学)、金崎英夫氏(金崎技術事務所)
(4)TES会・会長表彰 中田篤孝氏 (ゴールドウィンテクニカルセンター)
2.特別講演  
講演1. 『繊維業界におけるイノベーションと市場開拓』        
    講師 豊橋技術科学大学 教授 坂本 和子 氏
講演2. 『シルクの素晴らしい構造と 再生医療への応用』~衣料から医療へ~
    講師 東京農工大学 名誉教授 朝倉 哲郎 氏
3.交流会
参加者 49名(講演会)、21名(交流会)

年次大会要約

1.2019年度 北陸支部 年次大会

2.特別講演 講演1. 『繊維業界におけるイノベーションと市場開拓』        
    講師 豊橋技術科学大学 教授 坂本 和子 氏
講演2. 『シルクの素晴らしい構造と 再生医療への応用』~衣料から医療へ~
    講師 東京農工大学 名誉教授 朝倉 哲郎 氏

坂本氏の講演 IT業界で使用されている"タッチパネル"は1965年に発明されているが、2007年にアップルのスティーブ・ジョブズがiPhone に採用するまで約40年も日の目を見なかった。技術はあったのにイノベーションは生み出せなかったのだ。日本の繊維産業は高いテキスタイルの開発力があるが、グローバル市場では必ずしも成功していない。新興国市場は有望な市場であるが、人口統計学的な視点、各国の文化的な背景や美的感覚を踏まえたデザイン・シンキングを含むイノベーションこそが市場開拓に必要であるとの展開。斬新なデザインなど種々の事例をあげられ、商品開発や市場開拓に必要な視点を提示された有意義な講演でした。

朝倉氏の講演 NMR(核磁気共鳴装置)を活用したシルクの構造の解明に関する地道で精緻な研究を基礎に 生体適合性のあるシルクを遺伝子組換え技術など最新のバイオ技術を駆使し新しいシルクの創製につなげ、それをフィルムやチューブ、スポンジなどの各種再生医療材料(デバイス)にすることを可能にした。このデバイスを大学の医学部や歯学部との共同開発で更に進化、実用性を高めている。特に 小口径の人工血管は血栓率が低く(開存率が高い)有用なものでベースにダブルラッセルの編地を用いている(福井経編の編地)が、驚いたことに 生体内で徐々に絹成分が減少し、血管のコラーゲン成分が増加するという素晴らしい成果を生んでいる。更に研究はクモシルクの創製に取り組んでいるスパイザー社との共同開発でその構造決定と高強度の糸開発への応用へと進んでいる。精緻で画期的な研究の過程をわかりやすく解説された。"衣料のシルクから医療のシルクへ"夢があり繊維産業に有用な研究である。

3.交流会 2人の講師をまじえ、活発な交流を行なった。