2019年度

2019年度新会員歓迎会

日 時

 2020/1/18(土)15:00~18:30

場 所 スーパードライ名古屋
第一部 講演 
テーマ 『パーソナル人工知能が拓くファッション産業の未来』
     講師 SENSY㈱ 代表取締役CEO 渡辺 祐樹氏
第二部 交流会
参加者 60名(うち新会員 14名)

講演概要と感想

 人工知能(AI)が様々な分野で活躍していることはメディア等で報じられているが、労働集約型産業を自認するファッション業界におけるAI観は、講演に先立つ伊藤代表幹事のあいさつの言葉を借りれば、「AIは自分たちには無縁の世界の話」と思っているのが実体ではないだろうか。
 今回の講演はそんな思いからすればまさに「目から鱗」の話であった。 学卒後6年目の2011年に渡辺氏がSENSY㈱の前身であるカラフル・ボード㈱を立ち上げた起業の原体験は、アパレル業界の在庫問題であったという。在庫問題は、企業収益の足かせとして長年問題視されながら、ほとんど変わることなく人の経験と読みによって管理されてきた。在庫のデータ管理といえばPOSシステムが導入されて久しいが、「モノを管理する」ためのPOSによる在庫ロス削減への貢献は限定的であったといえる。その意味で、AIの活用により在庫ロスを削減しようとする試みはイノベーショナルな発想である。
 同社の頭脳は、大学教授4名を含む20余名が活躍するSENSY人工知能研究所である。ここで、感性というファッション業界の必須課題をAIが学習している。同社のAIは、感性学習を得意とする特化型AIである。 在庫或いは在庫ロスが多いということは、企業と消費者の間に何らかのミスマッチがあるということである。これを解決すべき課題と捉え、複数企業のデータを集積し、必要な項目ごとに分類して顧客の感性データとして管理活用する。
 お客様一人ひとりがが、いつ、何を、どこで、どうするか?をより正確に予測できればロスは削減できる。これまでは、MD個人の能力に頼るところが大きかったが、AIで処理すればはるかに膨大なデータをより正確に処理することができ、予測の精度は間違いなく上がるものと思われる。まだ完成形でなく、開発途上だと渡辺氏は述べたが、既に実効果をあげる企業が出ているのも事実だ。
 最後に述べられた「AIは魔法の杖ではない」はこれからAI活用を考える立場には大切な視点である。AI導入がブームになった頃には、AIを導入することが目的になってしまい、多額の資金をつぎ込んだ挙句に活用できないという事例がしばしばあったという。自社の戦略上重要な課題に対して、どのような観点からAIを活用すべきかを明確にし、その解決方法を検討、評価することが第一歩といえる。