日 時 | 平成31年1月26日(土) 15:00~18:45 |
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場 所 | スーパードライ名古屋 |
第一部 | 講演 『人の温熱に対する生理反応と衣服の快適性』 講師:文化学園大学 名誉教授 蚕糸科学研究所 客員教授 田村 照子氏 下記のテーマに沿って、お話いただいた。 1) 衣服の快適性とは? 研究の意義は? 2) 快適衣服の要因・条件は? 3) 快適衣料の研究方法は? 4) 研究事例から見た快適性研究上の留意点 心理反応、生理反応、行動反応、物理評価 5) 快適アパレルの研究・開発―今後の課題 |
第二部 | 交流会 |
参加者 | 41名(うち新会員 8名) |
衣服の役割には体温を保つ、外的刺激から身体を守る等の機能がある。現代の衣服はファッション性に重点が置かれがちであるが、本来のこうした機能が今でも求められていることに変わりはない。近年、アパレル製品への様々な機能性付与が競われているが、衣服の機能の原点はやはり体温調節の補助機能であり、更に快適に着用できる衣服であることが求められている。快適な衣服を製造するために必要なことのひとつとして人体生理学があり、TES試験の必須項目でもある。
今回の特別講演では、我が国における人体生理学研究の第一人者のお一人である講師に、衣服の快適性に関する研究の意義から快適アパレル製品の研究開発に関する今後の課題までをお話しいただいた。
冒頭部分で語られた「見た目で売れるのではなく、着用すると快適だから売れる、そういう衣服を作ってほしい。」というコメントは業界に携わるものとして心に響くものがあった。
今回の講演は90分という限られた時間の中で感覚のひとつである温冷湿潤感覚を中心にして行われた。
温冷熱の受容→心理反応(暑い/寒い)→生理反応(発汗/産熱)→行動反応(衣服の着脱・首をすくめる等)という基本的な流れの説明の後、幾つかの興味深い話をされた。
・(温熱生理反応として)手のひらは汗をかかない(緊張などの心理反応としての
発汗はある)
・トウガラシやミントは生理反応における判断を誤らせる
・人間の皮膚に湿潤感覚器はない
・手足の指先が冷たくなるのは、体温調整が正常に行われている証拠である
・皮膚の温熱感受性は、加齢とともに低下し、高齢者の下肢では10℃の温度変化を
感じない人も
いる(低温やけどのリスクにつながる)
最後にアパレルへの注文として、快適性の定量化を挙げられた。単に「暖かく(涼しく)感じられます」ではなく、「どれだけの変化が期待できるかを数値化して示す」ことである。確かにこの面における業界の対応は遅れていると言われても仕方ない現状である。また、温冷感や吸湿に関する様々な機能性が謳われているが、実際の衣服着用時における快適性には熱と水分の両方が同時に影響しており、片方だけ付与された機能性に対する感覚は実態と異なることを認識しておく必要があるとして発汗サーマルマネキンの有効活用を述べられて締め括られた。