日 時 | 2018/1/20(土)15:00~18:45 |
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場 所 | スーパードライ名古屋 |
第1部 | 講演:テーマ 『スマートテキスタイルの現状と今後』 講師:福井大学 産学連携本部 客員教授・名誉教授 工学博士 スマートテキスタイル研究会委員長 堀 照夫氏 |
第2部 | 交流会 |
参加者 | 58名(うち新会員 14名) |
最近よく耳にするスマートテキスタイル(ST)であるが、ファッション衣料を扱う立場からすると産業用繊維という別世界のことのようにみえてしまう。今回の講演では、我が国におけるST研究の第一人者である堀先生に現状と今後についてお話しいただき、概要や研究の進展度、どのように利用され始めているか等を分かりやすくご説明いただいたおかげでファッション衣料を扱う身にも身近なものであることが理解できた。
始めに「STとは、一般の繊維素材では得られない新しい機能を備えたテキスタイル素材または既存の機能を新規の技術で得るテキスタイル素材の総称」と定義付けられた。
ST研究は繊維産業の復活を目指すヨーロッパで始まり、現在も最先端を行く。日本は出遅れたが、得意の技術力をもって追いかけている。
STの特徴は、企業、業界、国の枠を超えてお互いに連携しつつ研究開発を進めているところにある。個別対応が普通になっている日本でも、繊維系3学会が連携してST研究会を立ち上げて活動している他、企業活動でも業界の枠を超えた連携がみられる。STは繊維に加えて電気、電子、IT、環境、社会分野の企業、業界の連携が求められることから、繊維産業に大きな変革をもたらすものと思われる。
目覚ましい勢いで研究開発が進むSTであるが、課題も多々ある。そのひとつは、基礎技術である導電性繊維の加工がカーボン中心であるため、STは黒色が多く、染められないというファッション性の欠如である。また、現時点では、洗えない、或いは洗濯性が劣るといわざるを得ない。更に着用感が良くないのも欠点である。
しかし、マイクロコンピュータの小型化など科学技術の進歩は日進月歩であることから、これらの課題もいずれ解決され、STは医療、介護はもとより様々な分野で日常的に利用されるようになると考えられる。
もうひとつ興味を持って聞いたのは、超臨界染色という無水染色である。多量の水を必要とする現在の染色は排水による汚染問題またはその防止設備に多額の費用がかかるが、超臨界染色なら、水の悪い奥地、水のない砂漠地帯でも染色できる。日本には超臨界染色工場はまだないが、ASEAN諸国ではすでに稼働しており、ナイキ、アディダス、プーマ、ミズノは超臨界染色で作られたニットを原料として採用すると発表している。
最後に、質問に答える形で、ファッション衣料は機能性繊維であるSTとは別物なので今後もなくなることはない、但し、影響は受けるであろうと語られた。
*今回の新会員歓迎会には、中国支部の吉村代表幹事も遠路参加され、STの話を熱心にお聞きになった後、交流会にも参加されて中部支部会員との交流を深めていただいた。今後もこうした支部間の交流が活発化することを願う。