日 時 | 2019/4/19(金) 18:30~20:30 |
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内 容 | 講演『最近取り扱われた修整品の内容とその対処方法について』 講師 ㈱桑原 海外グループ兼中部・西日本営業部 部長 新海 達司氏 同 技術部開発課 課長 後川 欣英氏、 同 技術部 主任 東 竜典氏 |
場 所 | 金城学院大学サテライト |
参加者 | 30名 |
様々な技術革新がなされてきたにもかかわらず、現在においても繊維製品の製造には修整がつきものである。繊維製品の製造にかかわっている方であれば、なにがしかの形で「修整屋さん」と呼ばれる直し屋さんにお世話になった経験があると思う。今回は、その修整を生業としている㈱桑原の技術者の方に修整についてお話ししていただいた。㈱桑原が本社を置く愛知県一宮市は毛織物製造で知られる尾州産地の中心都市で、古くから修整業が盛んである。㈱桑原は、毛織物の修整から始まって現在では国内のみならず中国、ASEAN地域各国でも検品や修整業を展開する企業に成長した。思うに、単に経験に基づく修整にとどまらず、科学的分析、根拠に基づく修整をすることで顧客企業の信頼を勝ち得たところに同社の発展があったと思われる。
今回の講演では、豊富な事例を経験に科学的分析を加えて紹介していただいた。
近年、同社に持ち込まれる修整依頼のうち不動のNo.1項目は摩擦堅牢度の改善で全体の1/3強を占めている。2位以下は、色止め、耐光堅牢度、ピリング、洗濯堅牢度と続き、ここまでの上位5項目で全体の約60%である。様々な修整依頼の事例を紹介していただいた後、実際の修整内容を動画で解説していただいた。修整はやはり職人技である。
次に研究事例としてニオイの修整、接触冷感加工、黄変の修整について説明していただいた。
最後の項目、光に関するトラブル事例の中で注目したいのはLED光源によるトラブルである。光によるトラブルの筆頭は太陽光を原因とする耐光堅牢度不良であるが、環境問題も絡んで近年は様々な施設でLED照明が用いられている。新しい光源であるだけに、染料や染色業界においてまだLED対策は十分になされていないのではないかと懸念される。例えば、ショーウィンドーでのディスプレーのように製品の間近に光源を置くような場合においてはLED照明による変退色が懸念されるので注意を要するとの注意喚起があった。
繊維製品を製造する立場にあれば、できればお世話にならずに済ませたいと思うものの現実的には修整屋さんのお世話にならざるを得ないのが現状である。修整ができなければ、廃棄する等の処理が求められることもあり、環境負荷増大につながる。環境問題が企業価値を計る上で重要な要素となっている現状においては、同社のような修整業はますます必要になっていくと思われる。