2026年度

2026年度 第1回基礎講座セミナー

日 時 2026年7月25日(土)13:00~15:00
場 所 名古屋文化短期大学
テーマ 『繊維製品の品質管理(小売りからアパレルに期待すること)』
講 師 工藤 尚一 氏
参加者 53名

講演概要

 レナウン、アニエスベー、三越伊勢丹グループなどで長く品質管理を担ってこられた工藤尚一氏に、小売り側の実務としての品質管理とアパレルへの期待を、豊富な資料と事例で紹介いただいた。

 百貨店には大正時代から品質管理の部門があり染色試験などを行っていたという歴史や、現在の品質管理部門では、基準書整備、取引前の調査、商品導入前・展開時の各種管理や点検、販売後の対応、教育・啓蒙までを幅広い領域を担っている。特許・商標・パブリシティ権の確認の重要性や、海外買付品で「危ないものを仕入れない」ための体制についても具体的に紹介された。

 「店頭の商品は自分たちで守る」という意識のもと、納品後も売場での抜き取り検品や環境ホルマリン測定を継続し、「納品後の要因で問題を起こさない」姿勢が徹底されている。また、過去のカシミヤ表示事案などを背景に、優良誤認・景品表示法違反防止に強く取り組んでいる。カタログやEC表現についても、言葉を安易に使わず、何をもってそう謳うのかを基準で明文化し、且つ本当にそれを謳っても問題ないエビデンスを持つことの重要性が強調された。

 こうした厳格な運用の背景には、一度商品回収に至った場合の人手・時間・費用の大きさがある。小売側がここまでしてリスクを抑えようとしているからこそ、製造起因クレームについては、アパレル側に真因究明と再発防止へのより真摯な対応が求められるとの指摘があった。仕入先の説明を鵜呑みにするのではなく、根拠と基準を明確にし、善意のミスも悪意の偽装も止め、良品のみを納める責任あるものづくりが必要である。

 終盤にはAIにも言及があった。いまや「この不良の原因は?」とAIに問えば、経験の浅い人でも瞬時に多くの仮説や対策案を得られる。しかし、その中から正しい情報を選び、適切に適用できるかどうかが我々の価値であり、TES会というネットワークを通じて判断力と感度を高めてほしい、とのエールで講演は締めくくられた。