日 時 | 2021/3/13(土)14:00~16:00 |
---|---|
場 所 | ウインクあいち 1002号室(大会議室) |
テーマ | 『マスク等に用いる不織布素材のフィルター性能について』 |
講 師 | 三井化学株式会社 不織布事業部 産材開発室室長 市川 太郎 氏 |
参加者 | 49名 |
飛沫感染が主体である新型コロナウイルス(COVID-19)を予防するためのマスクは現在では着用するのが当たり前となっており、その機能性は誰もが注目するところである。今回は感染予防効果が高いと言われる不織布マスクの製造方法や機能性について詳細に講演していただいた。
講演の冒頭は三井化学(株)様の会社概要とプラスチックについて、次に不織布の製造方法と利用分野などについて説明された。不織布は多本数の繊維でランダムに積層されたフェルト状の布を言い、フェルトを形成する方法は
[短繊維]
乾式法:
短繊維(15~100mm)を、カードと呼ばれ
る機械やエアレイと呼ばれる空気流で一定方
向またはランダムに並べて形成する方法
湿式法:
ごく短い繊維(6mm以下)を水と混ぜ合わ
せ、紙のように漉いて形成する方法
[長繊維]
スパンボンド法:
原料樹脂を溶融・紡糸させて得られる連続
した長い繊維を直接積層してフェルト
を形
成する方法
メルトブローン法:
樹脂を溶融して紡糸ノズルの周囲から噴射
する高温エアにより、繊維を細くして
積層
しフェルトを形成する方法
があり、一般的な3層積層マスクで使用される不織布は外層と内層がスパンボンド不織布、中間層がメルトブローン不織布である。外層はマスクとしての強度や中間層の強度を補強する役目、内層は肌あたりが優しく中間層を補強する役目、中間層は極細繊維で異物を捕集する役目が要求される。つまり、中間層のフィルター性能がマスクの機能性を大きく左右することになり、圧力損失が小さくて捕集効率が良好な性能がマスクに求められる。そのために、繊維径の極細化や荷電処理を行って異物の吸着を促進し捕集効率を向上させる付加機能、化学的に親和力を高める機能、抗菌・抗ウイルス剤の塗布や練り込みで菌やウイルスを無害化する機能などが考えられている。
最後に三井化学(株)様の環境への取り組みについて、CO2削減、リサイクル、バイオマスプラスチックなどを紹介いただき講演を終了した。
不織布は織物や編物と比べると原料から直接生地シートが生産できるため、安価で生産効率が良く、利用分野は多岐にわたっており、メディカル、生活資材、工業資材、土木資材、農業資材など様々な業種で利用されている。洗濯耐久性が低いことにより一般衣料には向いていないが、新たな技術の導入でさらなる発展や新規用途が期待出来るのではないだろうか。
講演後には、受講者から不織布の製造方法、マスクの捕集効率の維持方法や耐洗濯性、工場の品質管理方法、環境対策など多くの質問が寄せられ関心の高さが伺われた。
なお、コロナ禍での講演のため、定員171名の大会議室に参加者を50名に制限して間隔を空けて受講し、入室時には検温やアルコール消毒、マスク着用をお願いし、十分な換気を行うなどの対策を実施して講演が行われた。