2025年度

2025年度 TES会中部支部年次大会 特別講演

日 時 2025年5月24日(土)  12:45~15:00
場 所 名古屋文化短期大学
テーマ 「ひつじのようなふわっとした関係が産地の未来を紡ぐ」
講 師 伴染工株式会社 専務取締役 伴 昌宗 氏
国島株式会社  工務部 工程管理課 課長代理  堀内 雄人 氏
参加者 53名

講演概要

 伴染工株式会社の伴氏と国島株式会社の堀内氏にお越し頂き、「ひつじのようなふわっとした関係が産地の未来を紡ぐ」をテーマにご講演頂いた。ひつじサミット尾州は、2021年に尾州産地の有志11名から発足した活動で、今年で5年目を迎える。伴氏は2025年の実行委員長、堀内氏も運営の主要メンバーである。

 伴染工株式会社はかせによる糸染めを行っているが、このかせ染めの技術・設備のある工場は全国でも非常に稀少である。チーズ染色とは異なりリラックスした状態で染色を行う為、風合いが出しやすく、染められた糸はその風合いを活かし、織物や編み物のみならず手芸用途にも使用されている。

 国島株式会社は1850年(嘉永3年)創業。紳士トラッドを主力に、ウールだけではなく、綿・麻・意匠糸等も扱っている。先日、大阪・関西万博会場内で行われたファッションイベントで石破茂首相が着用していたジャケットとズボンの生地が国島製であることも、その技術力の高さを物語っている。長い伝統の一方、「自動検反機」、「IoTを用いたタスク管理システム導入」など新しいものも取り入れ、品質・生産効率向上に取り組んでいる。

 2021年にスタートした「ひつじサミット尾州」、昨年は参加事業者数37社、協賛協力事業者22社、来場者数延べ約1万2千人と、老若男女が楽しめる尾州有数のイベントとなっている。実際に生産工程を見られる企業見学には全国から見学者が訪れ、積極的に職人たちに質問をするという、まさに繊維のまちいちのみやならでは光景が見られた。サミットには繊維企業だけではなく飲食店も11社参加し、オープンファクトリーの他にもグルメ、ワークショップ、ひつじとの触れ合い、生地・アイテムの販売も行われた。また、参加者の関心の高さから、工場で働く人が改めて自らの技術や仕事に自信と誇りを持つ機会にもなっている。
 2025年は「つながる」をテーマに、「産地の技術」、「尾州に興味のある人」、「新規の販路」、「異業種」、「高校生・大学生若者」、「産地に住む人」、「ウールの消費者」、「隣の人、隣の会社」など、様々な方との垣根のない交流の場となることを目指す。また、ビジネスの可能性をより広げるため、認証やDXにも積極的に取り組んでいく。

 報告者所感として、同じ繊維業界に身を置く者としてオープンファクトリーにはもちろん興味津々だが、お二人の話や投影された動画も非常に楽しく、仕事の延長ではなく家族でひつじサミットを楽しみたいと感じた。10月24日(金)~26日(日)の3日間開催されるひつじサミット尾州2025、ぜひTESだけでなく幅広い皆さんが訪れ、ものづくりの楽しさと奥深さ、人とのつながりの楽しさや可能性を感じていただきたい。
                                        以上