2024年度

2024年度 TES会中部支部年次大会 特別講演

日 時 2024年5月25日(土)  13:20~14:50
場 所 名古屋文化短期大学 アセンブリーホール(A館3階)
テーマ 「PFAS規制の動向と評価方法」
講 師 一般社団法人カケンテストセンター
大阪事業所 環境化学分析ラボ
ラボ長補佐 川名 康博氏
参加者 51名

特別講演要約

 今回、一般社団法人カケンテストセンター 川名様にお越し頂き、「PFAS規制の動向と評価方法」というテーマで
 ①そもそもPFASとはなに? 
 ②日本および諸外国規制の最新動向 
 ③評価・分析方法
について講演して頂いた。
①PFASについて 「PFAS」とは有機フッ素化合物の総称であり、米国EPAによると1万種以上存在するとされている。PFASの特徴として、耐熱性、耐水性、耐油性、非粘着性等が非常に高く、繊維製品も含め多くの分野・製品に利用されている。一方で、PFASは自然界には存在せず、自然環境中ではほとんど分解されず残留することから、様々な問題が顕在化している。PFASの中には、PFOS/PFOA(C8フッ素)、PFHxS/PFHxA(C6フッ素)およびその塩(えん)と類似物質(関連物質と表現されることもある)などが含まれる。 ②法規制について 国際条約として「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」があり、付属書A(廃絶);PFOA、PFHxSなど、付属書B(制限);PFOSなどが対象となっている。日本では、この国際条約に批准しており、国内では、「化学物質の審査及び製造等の規制物質に関する法律(化審法)」により規制される。第一種特定化学物質に登録されると「対象の化学物質原則使用禁止」および「対象の化学物質を使用した製品の輸入禁止措置」の対象となる。現在、「PFOS又はその塩」、「PFOSF」、「PFOA又はその塩」が第一種特定化学物質の登録されており、「PFHxSもしくはその異性体又はその塩」が2024年2月1日付で指定、「PFOAの異性体又はその塩(関連物質)」が2024年夏頃に政令公布される予定である。欧州では、POPs規則およびREACH規則の主に2つの法令で規制されている。POPs規則は日本と同じだが、REACH規則によりPFHxA、PFCA(C9~C14)が制限物質(RS)、PFBS、PFHpAが許可対象候補リスト物質(CLS)となっている。また、欧州ではPFASを広く規制使用とする動きがあり、PFASを規制する提案がECHAに提出されている。米国では、POPs条約に署名しているものの批准はしておらず、州毎に規制が異なる。例えば、カリフォルニア州では繊維製品により「全有機フッ素の意図的な使用の禁止」や「PFAS100ppm以上を含む繊維製品の製造、配布、販売、または販売のための提供禁止」等、マサチューセッツ州では「全フッ素として1ppm以下」等の措置がとられている。 ③評価・分析方法について 日本、欧州の様にPFOA、PFOS等の特定物質に対応した試験として、LC-MS、GC-MSにより定量試験を行う。また、米国の様にPFAS全般の規制に対応した試験としてイオンクロマトグラフィーを用いて全有機フッ素量を数値化する試験を行っている。得られた試験の結果として、以下のような解釈となる。
不検出 → 不使用と推定
検 出 → 高濃度・・・使用が疑われる
      低濃度・・・使用が疑われるが、非意図的な生成物に由来する検出の可能性や
            コンタミネーション(汚染)の可能性も
非意図的な生成物に由来する検出の可能性、コンタミ、生地重量の違いによる検出濃度の差異などにより得られた試験結果だけでは各規制物質の不使用の証明にはならない。よって原材料管理、製造管理で不使用を確認し、試験は補助的なものと捉えることが必要である。 ④その他COP11においてメトキシクロル(殺虫剤)、デクロランプラス(難燃剤)、UC-328(紫外線吸収剤)が付属書Aに追加され、令和5年7月に開催された化学物質審議会第229会審査部会において、第一種特定化学物質へ指定する事が決定された。