第42回クレーム事例勉強会
TES会 中部支部
児玉 肇
第42回クレーム事例勉強会報告(1)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 糸ムラによる織段
品名 毛織物
原産国 日本
組成 ウール 100%事例提供者業種 紡績
苦情内容
製織された毛織物に織段が発生している。原因分析をして欲しい。
検討内容
・製織時に太い糸と細い糸が混入したのではないか。
・密度と番手を正常部と異常部で比較してみる。
・事例提供者紡績糸は2500mごとに番手を測定した。
・チーズ染めでボビンの芯部分の糸もすべて使っている。検討結果
・織段のタテ巾は1.5cm程の長さで出ている。密度は大体61〜64本/インチ、番手差は正常な糸35本、異常な糸24本のものもあった。
よって番手の違う糸の混入によって表面の見え方が異なり織段を発生した。
・チーズ染めの場合、ワインディング時のテンションを糸の素材・番手により調整して捲く必要がある。テンションがかかり過ぎると染色時に芯部分の糸がボビンに圧着し平ぺたくなり番手差が生ずる。染色後の異常芯部分は破棄するのが通常である。
・その他、糸撚数や糸質のバラツキにより製織・染色後に織段が発生する場合があるが、今回の場合原因の特定は断定できない。
第42回クレーム事例勉強会報告(2)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 テンセル素材のスレ
品名 婦人上着
原産国 中国製
組成 テンセル 55%、綿 45%
表示 裏返して洗ってください
取り扱い絵表示 事例提供者業種 クリーニング業者
苦情内容
初めてのクリーニング(水洗い)にて両袖に白いラインが出来た。検討内容
・テンセルは素材は特有のフィブリル化(糸がささくれる)が出来易い。
・製造加工後にインキング補修したものはクリーニングで再発する。検討結果
・この場合のスレはテンセル素材特有の欠点である。クリーニング時は表示にあるように衣服を裏側にして容器内で擦れ合わないように網に入れて洗うことが望ましい。
第42回クレーム事例勉強会報告(3)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 色汚れ
品名 スカート
原産国 不明
組成 表:毛 90%、ナイロン 10%
裏:ナイロン 100%
取り扱い絵表示
事例提供者業種 消費者
苦情内容
クリーニングに出したらスカート後ろに色汚れが出来た。検討内容
・古着屋で購入したもの。
・表示タックは切り取られておりメーカーなどは不明。
・犬模様の紺色顔料プリント部から移染したのではないか。
・顔料プリント部の周りのスカート生地は色にじみが見られない。検討結果
・顔料プリント部の紺色からのにじみが無いのでクリーニング時の移染の可能性は少ない。
・スカート生地へのプリント転写作業前後に何らかの影響で色汚れしたのではないかと考えられる。
第42回クレーム事例勉強会報告(4)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 ボンディングのはくり
品名 婦人ジャケット
原産国 韓国製
組成 表:基布ポリエステル 100%
裏:パイル部アクリル 80%
ポリエステル 20%
表示 色落ち、色移りに関する付記あり
取り扱い絵表示
事例提供者業種 クリーニング業者
苦情内容
クリーニングに出したらポリエステル基布とパイル地のはくりがおきた。検討内容
ウエスト部位の表面に細かい凹凸が出来た。
・ボンディングレザーの寿命は製造し着用してから3年間とみるのが通常。過去の経験からも5年経過したものは伸びることが多い。
・袖、ウエスト周り剥離している。基布との接着がはずれている。
・クリーニング事故発生状況報告によれば、ドライ石油系で時間短縮し自然乾燥している。表示方法の違いが指摘されている。検討結果
・ボンディングレザーの基布とパイル地の接着は弱いのでドライクリーニング時に絡んだり引っ張られるとはくりが発生しやすい。クリーニング業者も剥離事故発生を避けるため注意して取り扱っている。結果から判断して商品取扱い表示の洗濯方法に耐えられず品質耐久寿命と考えられる。
・ボンディングレザーの耐用年数やクリーニングに関するデメリット表示の必要がある。
第42回クレーム事例勉強会報告(5)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 縫い糸への色泣き
品名 コート
原産国 中国製
組成 表:綿 70%、ポリエステル 30%
ライナー:ポリエステル 65%、レーヨン 35%
取り扱い絵表示
苦情内容
ドライクリーニング(パークロ)したら縫い糸に色泣きした。検討内容
・ミシン糸は表P70/C30%、裏P100%のもの。
・ミシン縫い目から顕著に色泣きした部分と全くない部分があった。
・石油、パークロのクリーニング試験では汚染、変退色とも4級以上で問題なし。
・石油溶剤で色泣きした部分の染料が簡単に落ちた。検討結果
・縫い糸にミシン油が浸みていると分散染料が縫い糸に移ることがあるので注意する。
第42回クレーム事例勉強会報告(6)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 変退色
品名 紳士用パンツ
原産国 イタリア製
組成 綿 100% ベージュ色
付記 タンブラー乾燥不可
取り扱い絵表示
事例提供者業種 クリーニング業者
苦情内容
クリーニングに出したパンツの前身が変退色した。検討内容
・石油系ドライ後にみたら変色していた。
・パンツの前身が殆ど変退色している。後身は元色がやや残っている。
・前身のウエスト部分から下にかけて変退色している。
・窒素酸化物による変退色試験と耐光試験で変退色を試験する。検討結果
・耐光試験40時間で照射部分の変退色が再現された。従って店頭展示されている状態で、長時間同じ状態で日光に当たるところに放置され変退色が起きたと考えられる。窒素酸化物による変退色はなかった。
・耐光堅牢度に弱い染料が使用されている。メーカーの品質試験で事前チェックできるものである。
第42回クレーム事例勉強会報告(7)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 変色
品名 アンサンブルワンピース
原産国 イタリア製
組成 表:麻 100% 紺色
裏:絹付記 1.摩擦によるアタリ(テカリ)発生注意、
つまみ洗い、アイロン処理注意
2.ネップ、ムラ状部分が見られることあり、麻の特性にて了承ください。
3.汗耐光後の変色注意、着用後速やかにクリーニングする。
4.裏からのアイロンを勧める。
取り扱い絵表示事例提供者業種 クリーニング業者
苦情内容
クリーニングに出したら背中部分が変色した。検討内容
・背中の変色が確認できない。
・麻素材で濃紺の場合はアイロンのアタリ艶が目立つので変色したように見えるのではないか。
・付記表示にあるようにムラ状部分が見られることがあることの了承表示がある。検討結果
・この素材は毛羽立ちの方向で色の見え方がデリケートに異なる。特に背中はアイロンのアタリ艶で色の濃淡差があるように見える。指先でなぞって毛羽の方向を変えるとムラ状に見える。
・この色ムラは素材と織り組織がもたらすものであり付記表示のとおり了承せざるを得ない。柔らかいブラシなどで生地表面を同一方向へ軽くなぞればムラは消える。
第42回クレーム事例勉強会報告(8)
日時 平成16年2月20日
場所 名古屋市西生涯学習センター
事例 伸び変形
品名 ニットブラウス
原産国 日本製
組成 綿 100% グレイ
付記 1.スチームアイロン使用不可。
2.タンブラー乾燥は避ける。
取り扱い絵表示
事例提供者業種 クリーニング業者
苦情内容
クリーニングに出したらエリ首周りが大きく伸びてしまった。検討内容
・寸法変化データ 原寸 着用後(伸び%)
着丈 57.5cm 56.0(−2.6)
衿天 23.0 33.5(+45.7)
身巾 42.0 44.0(+4.8)
ウエスト 36.2 36.5(+0.8)
裾巾 42.5 42.0(−1.1)
・メーカーでの寸法変化率試験JIS−L−1096−J−1法結果
タテ −2.6%、 ヨコ −0.9%で縮む生地傾向の結果であった。
・首周り生地のヨコ伸びが胸元生地のヨコ伸びより25%程大きく目風が違う。
・首周り生地はウエスト部位の生地に比べてヨコに伸びきっている。
・前身のタテ方向2ラインがオリジナルデザインより胸元でかなり開いてVラインになっており裁断・縫製の間違いではないか。
検討結果
・クリーニングされて伸びた商品の胸元のデザインがV形になっており元のデザイン(‖形)と比べて首周りが伸びやすい裁断・縫製になっている。
・クリーニング時の状態が付記(タンブラー乾燥禁止、スチームアイロン使用不可)に従ってやられたかが不明であり事故原因特定は断定できない。