第38回クレーム事例勉強会

TES会 中部支部
児玉 肇


第38回クレーム事例勉強会報告(1)

日時  平成15年6月20日

場所  名古屋市西生涯学習センター

事例  表面硬化


品名  ベスト

原産国 中国


組成  PVC 71%、ナイロン 16%

    綿 9%、ポリエステル4%


取り扱い絵表示

事例提供者業種  クリーニング業者

苦情内容
・クリーニング店で石油系ドライクリーニングしたところベストの表面が硬化し破れた。
検討内容

・繊維製品表示の場合、表面状態で繊維が見えればPVC(ポリ塩化ビニル)表示としてもよいが、このベストの表面状態を見るとPVC樹脂コーティングの合成皮革である。従ってメーカーの品質表示としてPVCではなくてPVC樹脂コーティングとすべきである。
・PVC樹脂コーティングの場合で石油系ドライクリーニングをするとPVC樹脂硬化し表面破壊破れを起こす。

検討結果

PVC樹脂コーティングの場合の洗濯方法は水洗いとする。

・よってこの場合はメーカーの品質表示が不適当である。


第38回クレーム事例勉強会報告(2)

日時  平成15年6月20日

場所  名古屋市西生涯学習センター

事例  テカリ


品名  スラックス

原産国 中国製


組成  ポリエステル 100%

取り扱い絵表示

事例提供者業種  アパレル

苦情内容
・消費者が家庭選択後にアタリ艶に気がついた。
検討内容
・家庭洗濯時にネットを使用せずに洗濯したことによってねじれた危険があるとの意見があった。

検討結果

スラックスの前身にアタリ発生が集中していることから着用中に固形物との接触によるアタリが発生したと思われる。

・繻子(しゅす)織のため表面にアタリによるテカリが目立ちやすいことも原因している。

第38回クレーム事例勉強会報告(3)

日時  平成15年6月20日

場所  名古屋市西生涯学習センター

事例  穴あき


品名  紳士スーツ

原産国 日本製


組成  表地:ウール 100%

    裏地:キュプラ 100%

取り扱い絵表示

事例提供者業種  クリーニング業者

苦情内容
・上着の袖に穴があいている。裏地にも穴があいている。又、小さな穴がある。

・平成13年10月末にクリーニングした。平成15年4月末に消費者が着用時に穴あきに気がついた。虫穴と思ったが解らない。
検討内容
・両袖口と右肩・袖上部にも穴破れあり。裏キュプラにも同位置に穴発生している。

・裏キュプラのみ穴発生箇所もあり。

・裏袖(肩口)の穴あき部分を顕微鏡で拡大し観察する。

検討結果

某アパレル試験室の調査報告では、虫食いではなく機械的衝撃で繊維が破断したことが最有力であるとの見解があった。

・電子顕微鏡の拡大写真によると、表地ウール繊維がカツオブシ虫特有のスプーン状の歯形とみられる食害面形跡がある。裏地キュプラ繊維にも食害面形跡がある。

・表地ウールの虫食いによる穴あき後を更にハサミなどの鋭利なものでカットした形跡がある。


第38回クレーム事例勉強会報告(4)

日時  平成15年6月20日

場所  名古屋市西生涯学習センター

事例  変色


品名  婦人用ジャケット

原産国 中国製


組成  麻 100%

取り扱い絵表示 無し

その他 洗い加工

事例提供者業種  商社・問屋

苦情内容
・製品洗いの商品が、店頭で2ヶ月ほどの陳列で変色が発見された。

・製品洗い加工済みの状態から変色が発生する。
検討内容
・検査機関で行われた堅牢度試験の結果からは想像できない変色。

・窒素酸化物堅牢度試験の結果、4級でガス変色には至らなかった。

・耐光退色変色とは思われない。

・製品洗い後の変色した製品で再度、堅牢度試験を行うこととした。

検討結果

製品洗い後の変色した製品で洗濯堅牢度試験(A−2法)をした結果、色落ちせず5級で問題なし。

・漂白剤(塩素系、酸素系)で色落ち試験をしたが色落ちが見られなかった。

・同じく耐光堅牢度試験(3級、4級照射)をした結果、色落ちせず問題なし。

・上記各試験結果では変色は見られず原因特定は不明である。

・製品洗い後の洗浄が不十分で製品生地に薬品が残っていた可能性もある。


第38回クレーム事例勉強会報告(5)

日時  平成15年6月20日

場所  名古屋市西生涯学習センター

事例  ピリング


品名  スラックス

原産国 中国製


組成  表地 ポリエステル 96%

       綿 2%、ナイロン 2%

    裏地 ポリエステル 100%

取り扱い絵表示

事例提供者業種  アパレル

苦情内容
・スラックスの前身のウエストから膝下まで全体とサイドの両ポケット部位に毛玉が発生した。
検討内容
・両ポケットの内側にも毛玉が発生している。手袋着用し作業時に着用していたのではないか。

・製品のピリングICI法(A法)試験結果では、毛羽立有りで4級の履歴有り。

・別途にピリングC法(400gf、20回)で試験してみる。

検討結果

ピリングC法試験の結果、かなり毛羽立ちがでる。

・ピリングICI法(A法)で再試験の結果、4級で問題なし。

・摩耗強度(マーチンデール)試験の結果、ピリング5級で問題なし。

・スナッグ試験(D−1、6時間)の結果、スナッグは認められないがピリングが目立ち判定は2級。

・あくまでも想定であるが、手袋をしてコンクリートブロックなどのようなかなりざらざらした表面のものの持ち運び作業時に着用されたのではないか。