第23回クレーム事例勉強会

TES会 中部支部
岩木 由和

報告(1)

日 時:8月4日

場 所:通産省・製品評価技術センター中部支所

参加者:19名

事例:保管中の変退色

品 名:浴衣

原産国:日本

組 成:綿100%

加 工:プリント

取扱い絵表示:無し

相談者:クリーニング業者

相談内容

長い間しまってあった浴衣を孫に着せるためクリーニングに持ち込まれた。影のような黒っぽいしみが有るため、気が付いて連絡したが消費者はこういう柄だと思い込んでいた。石鹸で揉んでも取れないが、過酸化水素で消える。原因は何だろうか。


検討内容

 1.写真で解るように黒っぽい汚れが幾何学的に、しかも全面に付いている。

 2.よく見るとプリントの柄とは少しずつずれており、無関係である。

 3.縫い糸は汚れていないので後から付いた物ではない。

 4.生地の段階で有ったとしたら縫う時に気が付いているはずである。

 5.経時変化ではないか。例えば、生地の加工段階で何らかのトラブルがあり、脱色後別の柄をプリントしたと仮定すると、脱色した部分が経時で発現してくる可能性は有る。

検討結果

生地を切ることが出来なかったため、化学的な分析が出来ず、実証は出来なかったが上記の推定でほぼ間違いないと思われる。


報告(2)

日 時:8月4日

場 所:通産省・製品評価技術センター中部支所

参加者:19名

事例:クリーニングでの剥離

品 名:ブラウス 

原産国:日本

組成:エステル100%(刺繍糸レーヨン)

加工:ラミネート加工

取扱い絵表示

相談者:クリーニング業者

相談内容

フッ素系ドライクリーニングでラミネートの一部が剥離した。メーカーが倒産していて苦情の持って行き場がない。直す方法はないか。クリーニングは何回もやっている


苦情品の状態

 1.剥離した部分のフィルムを見ると劣化してぼろぼろになっている。

 2.基布との接着も完全に剥がれている。

検討内容

ウレタン樹脂の経時による劣化とクリーニングが何回も繰り返されているところから推測すると、溶剤によるラミネート用接着樹脂の軟化及び摩擦や揉み作用といった物理的な力により剥離したものである。


報告(3)

日 時:8月4日

場 所:通産省・製品評価技術センター中部支所

参加者:19名

事例:クリーニングでのしみ汚

品 名:ダウンジャケット

原産国:中国

組 成:表地 ナイロン52%、エステル48%

    裏地 ナイロン52%、エステル48%

    中綿 ダウン80%、フェザー20%

取扱い絵表示
     


相談者:販売業者

相談内容

2年前に購入し2シーズン着用後初めてクリーニングに出したが所々しみが出来た。クリーニング店は、表示通りの処理をした、又しみの部分をしみ抜きすると更にしみが出来るといっている。原因は何だろうか。


検討内容

 1.ダウン自体が洗い不充分であれば問題が起きるが、このものは臭いもしないのでダウンに問題はない。

 2.淡い色であり、表地の堅牢度は問題無さそうである。

 3.洗浄液が汚れすぎていなかったか。

検討結果

ダウン製品は羽根の抜けを防止するため高密度織物を使用、又キルティングされている。このような製品はクリーニング時に脱液がしにくいため、乾燥工程でキルティング部分へ残留溶剤が集中、汚れや洗剤成分がしみとなって残る事が多い。原因はクリーニング店の脱液・乾燥工程にある。
 尚、対策としては、クリーニング業界の会員から詳しい説明があったが、要点は

 1.洗浄液の適切な管理

 2.残液率を下げる。(脱液時間を長くする、750回転以上回す、位置を変えて3回以上脱液する。)

 3.最初は常温乾燥し残留溶剤のキルティング部への集中を防ぐ。

 であった。