22年度

技術講演会 「ニット技術の基礎知識と技術・商品開発動向」/「ナノファイバーと 用途開発」

日 時 平成22年10月23日(土)13:30~17:10
会 場 (財)日本繊維製品品質技術センター 福井試験センター 別館会議室
内 容 (1)「ニット技術の基礎知識と技術・商品開発動向」
    田中技術士事務所  所長   田中 幸夫 氏 (元東洋紡績)
(2)「ナノファイバーと 用途開発」
    帝人ファイバー(株)    商品開発グループ 堀川 直幹 氏
参加者 55名

講演会要約

田中氏は、①編みの技術の歴史的変遷、②編まれる形状での分類(流し編地、ガーメント・レングス、成型編地、チューブラーなど)、③編目の基本的な事項(よこ編み、たて編みの編成の基本から各種組織)、④編針と編機について(各種編機の基本構造)と実に 系統的にニットの基礎的事項を話された後、⑤ニット製品の動向(よこ編みを用いたホールガーメント、丸編を用いたカーシートや滑り止め用途、機能性インナーやスポーツウェア、屋上緑化システムに用いる筒状丸編地、たて編みを用いた靴地やカーシート、メディカル下着・浴衣、床ずれ防止マット、人工芝など)について編み技術との関連で話された。そして最後に ⑥ニット製品の国内生産の推移とニット業界(横編、丸編、経編)の厳しい現状、今後の展望について話された。
本来は4~5時間かけて聴講するような内容を駆け足でお話し頂いたが、田中氏の深い技術経験と熱情あふれる講演で、受講者は感銘を受けるとともに大変勉強になった。

堀川氏は、易減量性ポリエステルを海成分とし、多数(1000個近く)のポリエステル島 成分から成るナノファイバー"ナノフロント"(新製品)の製造方法とその物性を活かした多様な用途展開について話された。ナノファイバーは、製織後、染色工場での減量加工で生成する。マイクロファイバーと比較すると、繊維直径(2000:85~700)、繊度(0.03:0.00007~0.005)、強度(2.7:3.1~4.8)、伸度(30~40:30)と 細くて強く、大きい摩擦係数などが特徴である。この特徴を活かした種々の用途展開が為されている。大きい摩擦係数を持っているので、すべりにくく、ずれにくく、ぴったりフィット感を与える為、グローブ、機能性インナー、サポーター、運動負荷向上パンツなどに応用されている。
堀川氏が専門の評価技術による性能を示され、従来品との優位性が示された。表面がナノサイズの繊維で覆われているので、肌摩擦のダメージが小さく、水分吸収性も大きいので体温上昇も少ないので、スキンケア商品やインナー、肌着などに適している。また、研磨微粒子(ダイヤモンド)の担持性能が大きいことから高密度ハードディスクなどの研磨布に用いられ、また ワイピングクロスなどにも用いられている。新しい技術開発、用途開発ということでおおいに刺激になった。